健康を気遣う方や、自然な甘味を求める方、また伝統行事や仏教文化に関心のある方は甘茶のことを知っている方もいらっしゃいますが、そもそも「甘茶とは何か?」と疑問に思うことはありませんか?甘茶は、日本の古い歴史と結びついた健康茶であり、特に仏教の灌仏会(花祭り)で使われる神聖なお茶としても有名です。近年では、甘茶の持つ抗炎症作用や抗アレルギー作用など、さまざまな健康効果が研究されています。
このページでは、甘茶の基本的な特徴や歴史的背景、健康効果だけでなく、副作用や安全性についても詳しく解説します。さらに、自宅での簡単な作り方やおすすめのレシピ、購入場所や選び方のポイントもご紹介しています。
読み終えたころには、甘茶が持つ深い歴史や魅力、そして実生活への取り入れ方までしっかり理解できるようになります。甘茶に興味を持った方は、ぜひ参考にしてみてください。

執筆者:
布袋農園 運営責任者 稲葉 浩太
野草茶・ハーブティー・薬膳茶を研究し、美味しく健康効果の高いお茶を求め日本各地を訪ねている専門家。
腸内細菌の遺伝子検査によるアドザイザーも行っており、「健康は腸から、腸は食物繊維から、食物繊維はお茶から」が口癖。
パーソナル薬膳茶マイスター、パーソナルヘルス協会認定パーソナル腸活コーチ、経営学修士
甘茶とは何か

甘茶とは、ユキノシタ科アジサイ属の植物「アマチャ」の葉から作られる、自然な甘みを持つお茶です。砂糖の何倍もの甘さがあり、健康茶や伝統行事で使われてきました。

アマチャの葉を発酵・乾燥させて作る甘茶は、独特の甘味成分であるフィロズルチンを含んでいることが特徴です。この成分により、砂糖の数百倍もの甘さを持ちながら、カロリーはほとんど含まれていません。また、カフェインも含まれていないため、妊婦の方や小さなお子さまでも安心して飲むことができます。
甘茶の味わいは、しっかりとした上品な甘さが特徴で、後味はすっきりしています。初めて飲む方には、その自然の甘さに驚かれることも多いでしょう。
甘茶とアマチャヅルの違い
甘茶とアマチャヅルは、読みや見た目が似ているため混同されやすいですが、実は全く異なる植物です。甘茶は「アマチャ」と呼ばれるユキノシタ科アジサイ属の植物の葉を原料としたお茶で、強い自然な甘みが特徴です。グルコフィロウルシンという配糖体が酵素の作用で分解されることで、フィロズルチンが生成フィロズルチンという物質が独特の甘味を生み出します。
ただ葉っぱを噛んでみるととても渋く苦く食べられたものではありません。発酵させることで甘くなります。
一方、アマチャヅルはウリ科の植物で、学名はGynostemma pentaphyllumです。このアマチャヅルは、甘味ではなくほんのりした苦みや青さを持っており、健康効果の面ではサポニンやその他の有用成分を含むため、健康茶やサプリメントの原料になることが多いです。
また、アマチャヅルは「ジャオグラン」とも呼ばれ、中国では不老長寿の薬草として扱われてきました。用途や効果も甘茶とは異なり、アマチャヅルは主に健康維持や体力向上を目的とした飲用、甘茶は主に伝統行事や自然の甘味料として使われる点でも大きな違いがあります。

甘茶の歴史と文化的背景
甘茶の歴史は古く、4月8日のお釈迦様の誕生部を祝う行事、灌仏会(花祭り)と深い関わりがあります。伝統行事だけでなく、家庭でも健康茶として親しまれてきました。
花言葉は祝杯です。
日本における甘茶の歴史は平安時代にまで遡るとされており、当時から宗教的な意味を持つ特別な飲み物として扱われてきました。特に山間部では、自生するアマチャの葉を採取して甘茶を作る習慣が代々受け継がれており、地域の貴重な伝統文化の一部となっています。
江戸時代には、甘茶は貴重な甘味料としても重宝され、砂糖が高価だった時代には庶民の間でも愛用されていました。また、風邪の初期症状や喉の痛みを和らげる民間療法としても利用されていたようです。
灌仏会(花祭り)とは?甘茶の役割は?

灌仏会(花祭り)は、毎年4月8日に日本全国の仏教寺院で行われるお釈迦さまの誕生日を祝う行事です。参道には色とりどりの花が飾られ、春の訪れとともに多くの人でにぎわいます。このお祭りでは、誕生仏像に甘茶をかける「灌仏(かんぶつ)」の儀式が行われます。
この儀式で使われる甘茶は、お釈迦さまが誕生した際に天から甘露(かんろ)が降り注いだという伝説に由来しています。そのため、参拝者が仏像に甘茶をかけることで、お釈迦さまの誕生を祝い、無病息災や家内安全を祈ります。寺院によっては、参拝者にも甘茶が振舞われ、無病息災のお守りとして持ち帰る習慣もあります。
この灌仏会では、甘茶を飲むことで厄除けや健康長寿の御利益があるとされており、多くの人々が一年の健康を祈願します。このように、甘茶は灌仏会に欠かせない神聖なお茶であるとともに、日本人の宗教的・文化的な生活に深く根付いてきた存在です。子どもから大人まで多くの人が、甘茶を通じて仏教文化に触れる機会となっています。


甘茶の効能

甘茶には、抗炎症作用や抗アレルギー作用、抗菌作用などさまざまな健康効果が知られています。自然な甘味を活かして健康的な飲み物として愛されています。
現代の研究により、甘茶に含まれる有効成分が科学的に解明されつつあり、その健康効果が注目を集めています。特に、主成分であるフィロズルチンやイソフィロズルチンなどの甘味配糖体が、様々な生理活性を示すことが明らかになっています。
▶ 抗炎症作用と抗アレルギー作用
甘茶に含まれるフィロズルチンという成分は、強い抗炎症作用と抗アレルギー作用があることで注目されています。フィロズルチンには、体内の炎症反応を和らげる働きがあり、アレルギーによるくしゃみや鼻水、肌のかゆみといった諸症状の軽減にも期待できるとされています。
また、免疫バランスを整える作用が報告されており、花粉症やアトピー性皮膚炎など、アレルギーが関与する疾患にも役立つ可能性があります。実際にいくつかの研究では、甘茶エキスをマウスに投与したところ、アレルギー症状が軽減されたという報告もあります。
特に花粉症の季節である春先には、甘茶を継続的に飲むことで症状の緩和を実感される方も多くいらっしゃいます。このような効能から、春先の花粉症対策や日常の健康管理に甘茶を取り入れる方が増えています。薬に頼りたくないときや、自然由来の方法で症状を緩和したいと考える人におすすめです。
ただし、甘茶はあくまで健康食品であり、薬事的な効果を保証するものではありません。症状が重い場合や改善が見られない場合は、医師にご相談いただくことが大切です。
▶ 抗菌作用と健康茶としての効果
甘茶には抗菌作用があり、口内炎や歯周病の原因となる菌の増殖を抑える働きがあるとされています。昔からうがい薬代わりに使われることもあり、近年はマウスウォッシュの代替として注目されています。タンニンやフラボノイド系化合物がこの抗菌効果に関与していると考えられており、口臭予防や口腔内環境の改善にも役立ちます。
さらに、甘茶の大きな特徴は「カロリーがほぼゼロ」であること。甘味成分フィロズルチンは体内で分解・吸収されにくいため、血糖値を上昇させる心配がありません。砂糖の代替甘味料として、ダイエット中や糖質制限中の方にも安心して利用できます。
また、のどの乾燥やイガイガを防ぎ、日常的な健康維持に役立つ点も魅力です。市販されている甘茶の多くは無添加・ノンカフェインで、妊婦さんや子供、高齢者にも取り入れやすいのが特徴です。
さらに、甘茶にはマグネシウムやカルシウムといったミネラルも含まれており、毎日の栄養補給にも役立ちます。優しい甘みと豊富な効能がそろっているため、年齢や性別を問わず幅広い層に支持され続けているのです。
甘茶の副作用と安全性
甘茶は自然由来の飲み物ですが、過剰摂取や煮出しすぎには注意が必要です。稀に体質によってアレルギー反応が出る場合があるため、初めて飲む際は少量から始めましょう。
一般的に甘茶は安全性の高いお茶として知られていますが、どのような食品でも個人差があるため、適切な摂取方法を理解しておくことが重要です。
副作用のリスクと注意点
甘茶は一般的に安全なお茶ですが、摂取量を大きく超えて飲用した場合や、濃く煮出し過ぎた場合はまれに下痢や胃腸の違和感といった消化器系の副作用が現れる可能性があります。これは甘茶に含まれる甘味成分が、大量摂取により消化管に影響を与えることが原因と考えられています。
また、甘茶アレルギーという極めて稀なケースでは、発疹やかゆみなどの症状が出る場合も考えられます。アジサイ科の植物に対してアレルギー体質の方は、特に注意が必要です。
特に注意したいのは、発酵が足りていない商品です。アアジサイには毒性成分が含まれている場合があり、間違って摂取すると中毒症状を起こす危険性があります。市販の甘茶商品を利用する際は、必ず原料と製造元を確認しましょう。
妊娠中や授乳中の方、小さなお子さまが飲む場合にも、安全性を優先して少量から始め、体調に変化がないか様子を見てください。何か異常を感じた場合には、すぐに医師に相談することが大切です。
厚生労働省の「自然毒のリスクプロファイル」にも甘茶に関する注意喚起がされていますので、濃く出しすぎないように注意してください。2-3分から、上限でも5分くらいにとどめティーバッグはすぐに取り出しましょう。
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/higher_22.html
(厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:アマチャ)
安全な摂取量と適用方法
甘茶の一般的な摂取量としては、1日1〜2杯程度が安心とされています。これは通常のお茶と同様の量であり、この範囲内であれば副作用のリスクは極めて低いとされています。飲みすぎによる副作用のリスクを避けるためにも、最初は少量からスタートし、ご自身やご家族の体調を確認しながら継続してください。
また、甘茶はそのまま飲用する以外にも、うがいや口腔ケアの目的で使用する方法もおすすめです。マウスウォッシュ代わりに用いる場合は、適量(コップ半分から1杯程度)をうがいとして使用するとよいでしょう。この使用法では、直接大量摂取することがないため、より安全に甘茶の効果を活用できます。
健康維持や日常のリラックスタイムには、他のお茶や飲み物とバランスをとりながら楽しむことがポイントです。緑茶や麦茶など、普段飲んでいるお茶と組み合わせることで、味の変化も楽しめます。
市販の甘茶パックも表示された用法用量を守り、無理のない範囲で継続することが安全な摂取のコツです。体調や体質に不安がある方は、飲み始める前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
甘茶の作り方

甘茶は乾燥したアマチャの葉を使い、手軽に自宅でも淹れることができます。正しい淹れ方を覚えることで、甘茶本来の美味しさを十分に楽しむことができます。
自宅での甘茶の淹れ方
自宅で甘茶を淹れる手順はとても簡単です。まず、市販の乾燥アマチャの葉または甘茶ティーバッグを用意しましょう。急須またはティーポットに乾燥葉3~5g(ティーバッグなら1個)を入れ、熱湯300~500mlを注ぎます。
お湯の温度は90~100度の熱湯が適しており、一般的な緑茶よりも高温で淹れることができます。これは甘茶の特徴の一つで、高温でも渋みや苦味が出にくいためです。
2~5分ほど蒸らしてから、やさしく注いで香りと甘みを楽しんでください。蒸らし時間が長いほど甘みが強くなりますが、お好みに合わせて調整してください。初めて淹れる方は、2分程度から始めて、次回以降で時間を調整することをおすすめします。5分以上煮出すことは副作用の心配がありおすすめいたしません。
甘茶の特徴は高温でも渋みや苦味が出にくい点です。カフェインも含まれていないため、幅広い年代の方が安心して飲用できます。
甘みが強すぎると感じる場合は、お湯の量を増やしたり、他のお茶とブレンドしても美味しくいただけます。抽出後の葉はうがいや料理にも再利用できるので、無駄なく楽しむことができます。
おすすめの甘茶のレシピ
甘茶はそのまま飲んでも美味しいですが、工夫次第でさらに幅広くアレンジできます。おすすめのレシピとして、レモンやミントを加えた「甘茶レモンティー」は、爽やかな香りと優しい甘みが楽しめます。作り方は、淹れた甘茶にスライスしたレモンやミントの葉を加えるだけで、リフレッシュ効果も期待できる一杯に仕上がります。
レモンに含まれるビタミンCと甘茶の抗炎症成分が組み合わさることで、より健康的な飲み物となります。特に風邪気味の時や疲れた時におすすめです。
また、甘茶を冷やしてアイスティーとして飲むのもおすすめです。夏場は氷を入れて冷たく楽しみ、少量の生姜を加えることで体を中から温める効果もプラスできます。生姜の辛味と甘茶の甘みが絶妙にマッチし、季節を問わず楽しめる一品となります。
さらに、甘茶はお菓子作りの甘味料として砂糖代わりに使ったり、ゼリーやプリンに加えてヘルシーなスイーツにアレンジすることも可能です。甘茶で作ったゼリーは、自然な甘さが上品で、カロリーを気にする方にも喜ばれます。
他にも、甘茶と他のハーブティーをブレンドする方法もあります。カモミールやラベンダーと組み合わせることで、リラックス効果がさらに高まり、就寝前の一杯としても最適です。自然な甘さがカロリーを抑えるのにぴったりなので、健康志向の方やダイエット中の方にも嬉しいレシピと言えるでしょう。
甘茶の購入方法 どこで買える?
甘茶はネット通販や自然食品店、寺院の行事などで購入できます。購入時は原料や製法を確認し、安全に楽しむことが大切です。
近年、健康志向の高まりとともに甘茶の入手方法も多様化しており、従来の専門店だけでなく、様々なルートで購入できるようになりました。
甘茶は主にインターネットの通販サイト、自然食品専門店、健康食品店、または一部の仏教寺院の売店などで購入できます。ネット通販ではAmazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングといった大手サイトで扱いがあり、自宅にいながら簡単に注文できるのがメリットです。商品レビューや評価を参考にできるのも、ネット通販の利点です。
自然食品店やオーガニック商品の取り扱い店では、原材料や産地、無農薬・有機無添加といった品質情報を確認しながら選ぶことが可能です。実際に手に取って香りやパッケージを確認したい方には店舗購入が向いています。店舗スタッフから詳しい説明を受けることもでき、初心者の方には特におすすめです。
甘茶はさまざまな店舗や通販サイトで購入できますが、安心して長く続けるためには、原料や製法にこだわった商品を選ぶことが大切です。
当店「野草茶の布袋農園」では、国産のユキノシタ科甘茶を100%使用し、農薬不使用・無添加・無漂白ティーバッグ・ノンカフェインにこだわった甘茶をご用意しています。原料は、奥八女と呼ばれる八女市のさらに奥に位置する自然豊かな星野村で、地元の農家さんが丁寧に育ててくださったもの。清らかな水と空気に恵まれた環境で育った甘茶は、自然な甘みが際立ち、飲みやすさも格別です。初めての方でも安心して、気軽に取り入れていただけます。
記事:福岡・星野村で出会った、甘茶をめぐる旅

まとめ:甘茶を日常に取り入れよう
甘茶は古くから伝統的な行事や健康維持に活用されてきた自然のお茶であり、優しい甘味と健康効果が魅力です。近年では抗炎症や抗アレルギー、抗菌作用といった働きが科学的に明らかになり、幅広い年齢層から支持を得ています。
現代社会において、自然由来で安全な健康食品への関心が高まる中、甘茶は理想的な選択肢の一つと言えるでしょう。カフェインフリーで低カロリーという特徴は、健康意識の高い現代人のニーズにも合致しています。
作り方やアレンジも簡単で、自宅で手軽に楽しめるのが特徴です。購入場所や商品選びのポイントさえ押さえれば、初めての方でも取り入れやすいでしょう。日常的に続けることで、その効果をより実感できるはずです。
健康茶を日常に取り入れたい方や、ノンカフェイン・自然な甘味を求める方、伝統文化に触れてみたい方は、ぜひ甘茶を生活のひとときに加えてみてください。毎日のリラックスタイムがより豊かなものになり、健康的なライフスタイルの一助となることでしょう。

健康野草茶の布袋農園


